防波堤の上
「防波堤の上」は、浜田省吾の7枚目のアルバム(当時はLPレコード)「愛の世代の前に」のB面の最後に収録されている曲である。1981年9月21日に発売されたこのアルバムは、翌1982年1月12日に行なわれる武道館コンサートに向けてリリースされたもので、このコンサートの成功をばねに浜田省吾はステータスを築くことになるが、そんな「輝かしい」アルバムの最後に収録されているこの曲は、心に染み入るほどの孤独をうたっている。浜田省吾のソングライター、とくに詩に対するこだわりと実力はもっと評価されていいのではないかと私は思うが、そんな彼の並外れた作詞力が発揮された作品である。
防波堤に うち寄せて 砕ける 波を見てた
海の色に ふるえては 急いで 走り去った
悲しいほど自由 防波堤の上
と始まるこの曲は、いわゆる「暗い曲」である。しかし、その暗さにしめっぽさは感じられない。どちらかと言えば、冷静に事態を分析している明晰な視線を感じることができる。
私が好きな箇所が次のフレーズだ。
ドアを開けて 人に出会い 恋に落ち 誰かと眠る
期待されて 裏切られて
信号が 変わるのを待ってる
ここには人生のある一断面があざやかに切り取られている。
ある方のブログでこの曲について、次のように語っていた。「この曲の主人公は『生きる』という行為に絶望を抱いている。もはや自らを救うものは何も無い。防波堤の上に立っている自分の背中を風が押してくれたら・・・・と願っている歌なのだ。」とあった。
私にはじつは意外だった。曲の最後で「風よ 不意に オレの背中 押すがいい…ためらわないで」とあり、防波堤の上で立ちすくんでいる主人公がそう願っていると考えても不思議はない。
たしかに、この曲の「暗さ」の正体は「孤独」であり、その隣には「絶望」や「死」なども寄り添っていそうだ。
それでも私には、曲の冒頭で「急いで 走り去った」とあるように、主人公は死を予感しながらもその場所を離れていたように思える。いや、そう思い込んでいた。
ではなぜ、防波堤の上ではない場所で背中を押されることを願っていたと思い込んでいたのだろうか? 自分でも答えははっきりしない…..